問題の発端：SNSで広がった動画
事の発端は、2024年12月5日頃にTikTokに投稿されたグルメ動画だった。この動画では、「吉祥寺バーグ」のチーズハンバーグが紹介されていたが、ナイフで切ると中が赤身になっている様子が映し出されていた。動画では、肉の柔らかさが「歯茎で食べられるぐらい」と表現され、一見美味しそうに見えた。しかし、この動画がXで取り上げられると、状況は一変する。多くのユーザーが「これは生ではないか」「食中毒が心配」といった懸念を表明し始めたのだ。
食の安全性に関する懸念
ハンバーグの中心が赤いことに対する懸念は、決して的外れなものではない。ユーザーによって追加された背景情報によると、生や加熱不足の牛肉には腸管出血性大腸菌O157などの病原菌が含まれる可能性があるという。厚生労働省も、食中毒予防のために肉の中心部まで十分に加熱することを呼びかけている。特に、ハンバーグのような挽肉料理は、表面を焼くだけでは不十分だ。挽肉にする過程で表面の菌が内部に混ざってしまうため、中心部まで確実に加熱する必要がある。
店側の対応と説明
この騒動を受けて、「吉祥寺バーグ」の店主は取材に応じ、提供方法に問題があったことを認めた。当初は、客自身が熱した鉄板の上でハンバーグを焼く方式を採用していたという。しかし、この方法では中心部を75度で1分以上加熱するという基準を満たせないケースがあったことが判明した。店主は「今後は、店で火を通してから提供するように変えました」と説明し、客に焼いてもらう方法を止めることを明言した。また、これまでに食中毒の報告はないとしつつも、保健所の立ち入り検査に備えて対応を改めたという。
美味しさと安全性のバランス
この事例は、飲食店が直面する難しい課題を浮き彫りにしている。「吉祥寺バーグ」の店主は、以前他店で食べた中がレアのハンバーグの美味しさに感銘を受け、自店でも提供していたという。確かに、肉汁たっぷりのジューシーなハンバーグは多くの人を魅了する。しかし、美味しさの追求と食の安全性は時として相反する。特に、ハンバーグのような挽肉料理では、中心部まで確実に加熱することが食中毒予防の観点から重要となる。
今後の展望：安全性を確保しつつ美味しさを追求
今回の騒動を受けて、「吉祥寺バーグ」は提供方法を改めることになった。これは、食の安全性を最優先する姿勢の表れと言える。しかし、同時に美味しさを追求する努力も必要だろう。例えば、低温調理法を活用して肉を均一に加熱し、ジューシーさを保ちつつ安全性を確保する方法や、焼き加減の異なる部位を組み合わせてテクスチャーの変化を楽しめるハンバーグを開発するなど、創意工夫の余地は十分にある。