近年、世界中で音楽フェスティバルの中止が相次いでいる。2024年は「フェスがオワコンになった年」とも言われるほどだ。この「フェス不況」の背景には何があるのか。業界の最新動向と専門家の見解から、その真相に迫る。
インフレによるコスト上昇が直撃
フェス不況の最も明白な要因は、インフレによる運営コストの急激な上昇だ。音楽業界に詳しいエコノミストのウィル・ペイジ氏によると、フェスは元々ハイリスクなビジネスモデルだという。「フェスは、チケット販売やその他の収入で費用を回収できることを期待して、莫大な金額を事前に投資する必要がある」出演料、機材、保険、セキュリティなど、フェス開催にかかる費用は膨大だ。これらがインフレで更に膨れ上がり、チケットの売れ行きが芳しくないとなれば、大赤字は避けられない。
参加者の世代交代が進行中
しかし、なぜチケットが売れなくなったのか。ペイジ氏は、フェス参加者の「世代交代」を重要な要因として挙げる。2010年代はフェスブームで、「経験消費」を好むミレニアル世代が中心となって盛り上がった。しかし現在の若者世代(Z世代)は、必ずしもフェス熱が高くない。「Z世代はミレニアル世代ほど社交的ではなく、『孤立感』や『不安』が特徴として挙げられる」とペイジ氏は指摘する。
音楽ストリーミングの影響も
音楽ストリーミングサービスの台頭も、フェス離れに一役買っているという。「アルゴリズムがリスナーの音楽の好みを均一化させており、多様なジャンルのアーティストが出演する大規模フェスへの興味が薄れている可能性がある」
二極化する音楽フェス市場
フェス不況の中でも、成功を収めるイベントは存在する。ビヨンセやテイラー・スウィフトのような強力なファンベースを持つアーティストのライブは好調だ。フェス市場も同様に、トップクラスのイベントは生き残る一方で、中小規模のフェスは苦戦を強いられている。70周年を迎えた老舗「ニューポート・ジャズ・フェスティバル」が3日間完売したのは、その好例だ。
フェス業界の今後は?
2024年は確かに多くのフェスが中止に追い込まれた。しかし、これは業界の転換期と捉えることもできる。
- コスト管理の徹底
- ターゲット層の見直し
- オンライン要素の強化
などの対策を講じることで、フェス文化は新たな形で生き残る可能性がある。音楽ファンにとって、フェスという体験の魅力が完全に失われたわけではない。業界の動向から目が離せない。